所員 -岸本 展-

名前 岸本 展 (Kishimoto, Nobu)
講師
E-Mail nobu (emailアドレスには@kurims.kyoto-u.ac.jp をつけてください)
研究内容 偏微分方程式の研究
紹 介
 非線形偏微分方程式,特に分散型と呼ばれるクラスの発展方程式(非線形シュレディンガー方程式,KdV方程式等が含まれる)について,実解析的手法に基づいて初期値問題の適切性(解の存在と一意性,初期値の変動に対する安定性)や,線形解への散乱・有限時間爆発といった解の時間大域的性質等を研究している。線形分散型方程式の発展作用素は,放物型方程式ほど顕著ではないが,その分散性(異なる周波数の波が異なる速度で伝播する性質)からくるある種の平滑化効果を持ち,これは非線形方程式の解の性質を広いクラスの初期値に対して論じようとする際に常に重要な道具となる。1990 年代に登場したフーリエ制限ノルム法は,この種の平滑化効果を捉える新たな手法として,非線形分散型方程式の研究を飛躍的に進展させた。
 現在までの研究では,方程式の線形部分の性質に基づいたフーリエ制限ノルム法に,個々の方程式の非線形項がもたらす相互作用の影響を考慮した修正を加えて,より精密な結果を得ることに成功した[1-6]。方程式の非線形項を線形部分の性質のみを用いて制御しようとする従来の摂動法に対し,このように非線形性に関する情報を少しでも取り込むことができれば効果的である。一方で,この方法は一つ一つの非線形項に対して試行錯誤しながら修正していくといった側面があり,何らかの統一的な理論の整備が今後の課題として挙げられる。
 最近では周期境界条件下での(即ちトーラス上での)初期値問題に主として取り組んでいる。トーラスのようなコンパクトな空間上では,解の分散性に由来する平滑化効果は大幅に制限されるが,方程式の線形部分のもつ振動の周波数が非線形部分の周波数からずれている状況(非共鳴状態)においては,フーリエ制限ノルム法を用いることである程度の平滑化効果を引き出せる。これを活用すれば通常の(ユークリッド空間上で考える)問題と同様の結果が得られる場合がある[6-8] が,問題によっては本質的な違いが現れることもある[10]。周期境界条件下では,十分な平滑化効果を得られない共鳴状態にある周波数がどれくらいあるかを見積もることが重要となる。波の振動は離散的な波数(格子点)に制限されているので,特定の条件をみたす格子点の個数を評価することが必要となり,この段階で例えば球面上の格子点の個数の評価などといった数論分野の知識がしばしば有用となる。また,空間2 次元以上で各方向の周期が異なる場合に,周期(の比)によって解の性質にどういった違いが現れるかにも興味を持っている。
  1. Local well-posedness for the Cauchy problem of the quadratic Schrodinger equation with nonlinearity $\bar{u}^2$, Communications on Pure and Applied Analysis 7 (2008), 1123-1143.
  2. Low-regularity bilinear estimates for a quadratic nonlinear Schrodinger equation, Journal of Differential Equations 247 (2009), 1397-1439.
  3. Well-posedness of the Cauchy problem for the Korteweg-de Vries equation at the critical regularity, Differential and Integral Equations 22 (2009), 447-464.
  4. Counterexamples to bilinear estimates for the Korteweg-de Vries equation in the Besov-type Bourgain space, Funkcialaj Ekvacioj 53 (2010), 133-142.
  5. Local well-posedness for quadratic nonlinear Schrodinger equations and the "good" Boussinesq equation, Differential and Integral Equations 23 (2010), 463-493. (with K. Tsugawa)
  6. Sharp local well-posedness for the "good" Boussinesq equation, Journal of Differential Equations 254 (2013), 2393-2433.
  7. Local well-posedness for the Zakharov system on multidimensional torus, Journal d'Analyse Mathematique 119 (2013), 213-253.
  8. Resonant decomposition and the I-method for the two-dimensional Zakharov system, Discrete and Continuous Dynamical Systems 33 (2013), 4095-4122.
  9. Construction of blow-up solutions for Zakharov system on T^2, Annales de l'Institut Henri Poincare (C) Analyse Non Lineaire 30 (2013), 791--824. (with M. Maeda)
  10. Remark on the periodic mass critical nonlinear Schrodinger equation, preprint, to appear in Proceedings of the American Mathematical Society.