所員 -望月 新一-
名前
望月 新一 (Mochizuki, Shinichi)
職
教授
E-Mail
motizuki (emailアドレスには@kurims.kyoto-u.ac.jp をつけてください)
研究内容
数論幾何の研究
紹 介
私の研究の大きなテーマは,数体や局所体のような「数論的な体」の上で定義された双曲的代数曲線の「内在的ホッジ理論」を実現することにある。一般に,
代数多様体の「ホッジ理論」とは,その多様体上の代数幾何学的な構造,
またはその構造が定める不変量と,
多様体のエタール・サイト(=多様体の「位相」)へのガロアの作用という二つの一見異質そうなものを関係付けるような理論のことをいう。なお,この
例えば,局所体上の楕円曲線のホッジ理論では,楕円曲線のドラム・コホモロジーと, エタールまたは特異コホモロジーの間のいわゆる「比較同型」が中心的な存在となっているが, 90年代後半から研究を続けている楕円曲線の「ホッジ・アラケロフ理論」では, このような局所体上の楕円曲線の比較同型の類似を,アラケロフ理論という, 数体上大域的な枠組の中で実現している([4])。なお, この「ホッジ・アラケロフ比較同型」を適用することによって, 数体上で定義された楕円曲線に対して, 一種の数論的な小平・スペンサー射([4])を構成することができる。 この射は,古典的に知られている「(幾何的な)小平・スペンサー射」 の数論的な類似であり,幾何的な場合と同様,楕円曲線の族が定義されている基礎空間(=「ベース」)内の「移動」に対して, その移動によって生じる楕円曲線のモジュライの動きを記述するものである。
古典的な幾何的な状況では,小平・スペンサー射の存在から, 様々な面白いディオファントス不等式が直ちに従うことがよく知られており, そのため,数論的な小平・スペンサー射の構成によって, 数体上の数論的な状況においても同様な興味深い不等式が従うことが期待される。一方, このようなディオファントス幾何への応用を実現するためには, ある技術的な障害を処理する必要がある。最近の研究では, 「遠アーベル幾何」([2,5,7,10])にヒントを得た, 斬新な圏論的な手法([6],[8]) によって数体上の「絶対的なフロベニウス射」を構成し, それを用いることにより,「ホッジ・アラケロフ理論」に対して(p進タイヒミューラー 理論を連想させられるような)一種の 「標準的な数論的フロベニウス持ち上げ」 としての新しい解釈を与えることができることを発見した。 これらの進歩により,上述の障害が解消される日が近いと期待している。
「代数幾何=位相+ガロア」
という式の左辺に出てくるものが「曲線自身」([2,5,7,10])または
「その曲線のモジュライ」([3])となるようなホッジ理論のことを
「内在的なホッジ理論」と呼ぶことにしている。
例えば,局所体上の楕円曲線のホッジ理論では,楕円曲線のドラム・コホモロジーと, エタールまたは特異コホモロジーの間のいわゆる「比較同型」が中心的な存在となっているが, 90年代後半から研究を続けている楕円曲線の「ホッジ・アラケロフ理論」では, このような局所体上の楕円曲線の比較同型の類似を,アラケロフ理論という, 数体上大域的な枠組の中で実現している([4])。なお, この「ホッジ・アラケロフ比較同型」を適用することによって, 数体上で定義された楕円曲線に対して, 一種の数論的な小平・スペンサー射([4])を構成することができる。 この射は,古典的に知られている「(幾何的な)小平・スペンサー射」 の数論的な類似であり,幾何的な場合と同様,楕円曲線の族が定義されている基礎空間(=「ベース」)内の「移動」に対して, その移動によって生じる楕円曲線のモジュライの動きを記述するものである。
古典的な幾何的な状況では,小平・スペンサー射の存在から, 様々な面白いディオファントス不等式が直ちに従うことがよく知られており, そのため,数論的な小平・スペンサー射の構成によって, 数体上の数論的な状況においても同様な興味深い不等式が従うことが期待される。一方, このようなディオファントス幾何への応用を実現するためには, ある技術的な障害を処理する必要がある。最近の研究では, 「遠アーベル幾何」([2,5,7,10])にヒントを得た, 斬新な圏論的な手法([6],[8]) によって数体上の「絶対的なフロベニウス射」を構成し, それを用いることにより,「ホッジ・アラケロフ理論」に対して(p進タイヒミューラー 理論を連想させられるような)一種の 「標準的な数論的フロベニウス持ち上げ」 としての新しい解釈を与えることができることを発見した。 これらの進歩により,上述の障害が解消される日が近いと期待している。
- S. Mochizuki, A version of the Grothendieck conjecture for p-adic local fields, The International Journal of Math. 8 (1997), pp. 499-506.
- S. Mochizuki, The local pro-p anabelian geometry of curves, Invent. Math. 138 (1999), pp. 319-423.
- S. Mochizuki, An introduction to p-adic Teichmüller theory, Cohomologies p-adiques et applications arithmétiques I, Astérisque 278 (2002), pp. 1-49.
- S. Mochizuki, A survey of the Hodge-Arakelov theory of elliptic curves I, Arithmetic Fundamental Groups and Noncommutative Algebra, Proceedings of Symposia in Pure Mathematics 70, American Mathematical Society (2002), pp. 533-569.
- S. Mochizuki, The absolute anabelian geometry of canonical curves, Kazuya Kato's fiftieth birthday, Doc. Math. 2003, Extra Vol., pp. 609-640.
- S. Mochizuki, Semi-graphs of anabelioids, Publ. Res. Inst. Math. Sci. 42 (2006), pp. 221-322.
- S. Mochizuki, Absolute anabelian cuspidalizations of proper hyperbolic curves, J. Math. Kyoto Univ. 47 (2007), pp. 451-539.
- S. Mochizuki, The Étale Theta Function and its Frobenioid-theoretic Manifestations, Publ. Res. Inst. Math. Sci. 45 (2009), pp. 227-349.
- S. Mochizuki, Arithmetic Elliptic Curves in General Position, Math. J. Okayama Univ. 52 (2010), pp. 1-28.
- Y. Hoshi, S. Mochizuki, On the Combinatorial Anabelian Geometry of Nodally Nondegenerate Outer Representations, Hiroshima Math. J. 41 (2011), pp. 275-342.