伊藤 清
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伊藤清(1915-2008) 京都大学名誉教授(1979-2008) 日本学士院会員(1991-2008) 理学博士(東京帝国大学1945) |
IMUガウス賞受賞記念 2006年8月撮影 |
伊藤清博士は、確率論の先駆者の一人であり、伊藤解析の創始者である。
最初1942年に日本語で発表された確率微分方程式論は画期的な業績であり、
これによって非決定論的でランダムな時間発展の記述が可能となった。いわゆる伊藤の公式は、
数学の諸分野に留まらず、例えば、物理学においては共形場理論、
工学においては制御理論、生物学においては集団遺伝学などに、さらに近年では、
経済学における数理ファイナンスに至るまで広範に応用されている。
米国科学アカデミー(NAS)の記事を引用しよう。
伊藤博士は、60年余に及ぶ研究歴の中での輝かしい数学的業績によって高名であるだけでなく、 日本および諸外国の多くの数学者にとって真にinspiringな教師であり続けた。 また、1978年度日本学士院賞恩賜賞、 1987年度ウルフ賞数学部門、 1998年度京都賞基礎科学部門など国内外の数多くの賞と栄誉に輝いているが、 更に2006年、 国際数学連合(IMU)によって創設されたガウス賞の第1回受賞者となった。ピタゴラスの定理は別格として、 「伊藤の補題」(Ito's Lemma)以上に世界中に知れ渡り応用されている数学の成果は思い浮ばない。 この成果は、 古典解析におけるニュートンの微分積分学の基本定理と同様の役割を、 確率解析において果すものであり、 「必要不可欠なもの」(sine qua non)である。 |
1.伊藤清博士略歴 |
1915年 | 三重県に生まれる |
1938年 | 東京帝国大学理学部数学科卒業、 大蔵省銀行局(1938-1939)、 内閣統計局(1939-)を経て、 |
1943年- | 名古屋帝国大学助教授 |
1952年- | 京都大学教授 この間、米国プリンストン高等研究所研究員(1954-1956)、 米国スタンフォード大学教授(1961-1964)、 デンマーク国オーフス大学教授(1966-1969)、 米国コーネル大学教授(1969-1975)を歴任、 |
1976年-1979年 | 京都大学数理解析研究所所長 |
1979年-1985年 | 学習院大学教授 |
1979年-2008年 | 京都大学名誉教授 |
1991年-2008年 | 日本学士院会員 |
2.伊藤清博士の受賞歴その他 |
受賞等 | |
1977 | 朝日賞 |
1978 | 日本学士院賞恩賜賞 |
1985 | 藤原賞 |
1987 | 勳二等瑞宝章、 ウルフ賞 |
1998 | 京都賞 |
2003 | 文化功労者 |
2006 | IMUガウス賞 |
会員等 | |
1991- | 日本学士院会員 |
1989- | フランス学士院外国人会員 |
1998- | 米国科学アカデミー外国人会員 |
1981- | パリ第6大学名誉教授 |
1987- | チューリッヒ工科大学名誉教授 |
1992- | ウォーリック大学名誉教授 |
1995 | モスクワ数学会名誉会員 |
社会貢献 | |
1976-1983 | 日本学術会議会員、同数学研究連絡委員会委員長 |
1979-1981 | 日本数学会理事長 |
日本数学会編集『数学辞典』第3版編集委員長(岩波書店1985) | |
同英語版第2版 『Encyclopedic Dictionary of Mathematics: The Mathematical Society of Japan (2 Vol. Set)』編集委員長(MIT Press 1987) | |
英文業績リスト | |
著書等(英文著書等は上記参照) | |
「確率論」岩波現代数学(1953)、岩波基礎数学選書(1991) | |
「確率論の基礎」初版(岩波書店1944)、新版(岩波書店2004) | |
「確率過程」1、2(岩波書店1957)岩波講座現代応用数学:A.13.1-A.13.2 | |
「拡散過程」渡邊信三、福島正俊[共著](確率論セミナー1960) |