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全学共通科目講義(1回生~4回生対象)

 

現代の数学と数理解析
―― 基礎概念とその諸科学への広がり

授業のテーマと目的:
数学が発展してきた過程では、自然科学、 社会科学などの種々の学問分野で提起される問題を解決するために、 既存の数学の枠組みにとらわれない、 新しい数理科学的な方法や理論が導入されてきた。 また、逆に、そのような新しい流れが、 数学の核心的な理論へと発展した例も数知れず存在する。 このような数学と数理解析の展開の諸相について、第一線の研究者が、 自身の研究を踏まえた入門的・解説的な講義を行う。

数学・数理解析の研究の面白さ・深さを、 感性豊かな学生諸君に味わってもらうことを意図して講義し、 原則として予備知識は仮定しない。

第9回
日時: 2018年6月22日(金)
16:30-18:00
18:00-19:30 【補講】

※ 6月15日の講義が休講のため、6月22日に補講と合わせて2回分行います。
場所: 数理解析研究所 420号室
講師: 小澤 登高 教授
題目: 1.バナッハ・タルスキーのパラドックス
2.アインシュタイン・ポドルスキー・ローゼンのパラドックス

要約:
1.バナッハ・タルスキーのパラドックス
ハウスドルフとバナッハ & タルスキーは3次元の球体を有限個(5個)の部分に分割し、それらをうまく組み換え直すことにより、元の球体と同じ大きさの球体を2つ作ることができるということを証明した。このバナッハ・タルスキーのパラドックスと呼ばれる直感に反する現象について解説する。

2.アインシュタイン・ポドルスキー・ローゼンのパラドックス
量子力学における量子もつれ状態を利用する量子情報理論の世界では、古典的実在論的では説明できないことや想像できないことが起こる。アインシュタイン・ポドルスキー・ローゼンはそれゆえ量子力学の解釈が間違っていると主張したが、現在ではベル不等式の破れの検証などを経て、破綻しているのは量子力学ではなく 古典的実在論の方であると考えられるようになった。つまり、情報のやり取りが一切できず完全に独立しているはずの2者の間に、古典手実在論では説明のつかない不可思議な連絡(量子相関)が存在しうるのである(非局所性と呼ばれる)。この現象の可能性を数学的に定式化しようとすると、2通りの異なった やり方があることに気付く。つまり、事象を記述する状態空間を、有限次元であると仮定するか、無限次元であると仮定するか、の2つである。この2つの異なる定式化が 本当に違いをもたらすかどうかを問うのがチレルソン問題である。近年になってチレルソン問題は、純粋数学(作用素環論、非可換実代数 幾何学)における諸未解決問題と同値であることが分かってきた。この講義ではEPRパラドックスやベル不等式、チレルソン問題について解説する。線形代数学の基礎(線形空間の計量やエルミート行列の対角化)を知っていると話が分かりやすい。

参考文献:


"http://www.kurims.kyoto-u.ac.jp/ja/special-02.html"

 

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Research Institute for Mathematical Sciences (RIMS)