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全学共通科目講義(1回生~4回生対象)

 

現代の数学と数理解析
―― 基礎概念とその諸科学への広がり


授業のテーマと目的:
数学が発展してきた過程では、自然科学、 社会科学などの種々の学問分野で提起される問題を解決するために、 既存の数学の枠組みにとらわれない、 新しい数理科学的な方法や理論が導入されてきた。 また、逆に、そのような新しい流れが、 数学の核心的な理論へと発展した例も数知れず存在する。 このような数学と数理解析の展開の諸相について、第一線の研究者が、 自身の研究を踏まえた入門的・解説的な講義を行う。

数学・数理解析の研究の面白さ・深さを、 感性豊かな学生諸君に味わってもらうことを意図して講義し、 原則として予備知識は仮定しない。

第3回
日時: 2013年4月26日(金)
16:30-18:00
場所: 数理解析研究所 420号室
講師: 照井 一成 准教授
題目: 計算よ止まれ! 停止問題と算術の無矛盾性
要約:
与えられた自然数から別の自然数を作り出す操作をfとする。 いまどんな自然数nから出発しても、数列

n, f(n), ff(n), fff(n), ...

がいつかは1に到達するとき、便宜上「fは停止する」ということにしよう。 たとえば有名なコラッツの未解決問題は、f(2n) = n、 f(2n+1) = 6n+4 としたときfは停止するか?と述べることができる (ただし本講義ではこの問題には立ち入らない)。

停止性に関わる問題はコンピュータサイエンスの成立と発展の原動力となってきた。 たとえばコンピュータサイエンスの一番の基本定理は次のように述べることができる: 任意のfが与えられたとき、それが停止するかどうかは決定不能である(チューリング) 。

また、停止性は数学基礎論の観点からも重要である。たとえばペアノ算術の 無矛盾性を示すことは、ある種の操作fについて停止性を示すことに帰着する。 このときfは実際に停止する(ペアノ算術の無矛盾性)のだが、 fの停止性はペアノ算術の中では証明できない(第二不完全性)。つまり 「fは停止する」という命題は真なのに証明できない(第一不完全性の具体例)。

本講義ではこのあたりの事情について概観することにより、コンピュータサイエンスと 数学基礎論への導入としたい。


"http://www.kurims.kyoto-u.ac.jp/ja/special-02.html"

 

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