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全学共通科目講義(1回生~4回生対象)

 

現代の数学と数理解析
―― 基礎概念とその諸科学への広がり

授業のテーマと目的:
数学が発展してきた過程では、自然科学、 社会科学などの種々の学問分野で提起される問題を解決するために、 既存の数学の枠組みにとらわれない、 新しい数理科学的な方法や理論が導入されてきた。 また、逆に、そのような新しい流れが、 数学の核心的な理論へと発展した例も数知れず存在する。 このような数学と数理解析の展開の諸相について、第一線の研究者が、 自身の研究を踏まえた入門的・解説的な講義を行う。

数学・数理解析の研究の面白さ・深さを、 感性豊かな学生諸君に味わってもらうことを意図して講義し、 原則として予備知識は仮定しない。

第12回
日時: 2016年7月8日(金)
16:30-18:00
場所: 数理解析研究所 420号室
講師: 小澤 登高 教授
題目: 量子情報理論と非局所性
要約:
量子力学における量子もつれ状態を利用する量子情報理論の世界では、 古典的実在論的では説明できないことや想像できないことが起こる。 アインシュタイン=ポドルスキー=ローゼンはそれゆえ量子力学の解釈が 間違っていると主張したが(いわゆるEPRパラドックスである)、現在では ベル不等式の破れの検証などを経て、破綻しているのは量子力学ではなく 古典的実在論の方であると考えられるようになった。 つまり、情報のやり取りが一切できず完全に独立しているはずの2者の間に、 古典手実在論では説明のつかない不可思議な連絡(量子相関)が 存在しうるのである(非局所性と呼ばれる)。 この現象の可能性を数学的に定式化しようとすると、2通りの異なった やり方があることに気付く。つまり、我々の住んでいるこの世界の事象の 全てを記述する状態空間が、有限次元であるとするか、 無限次元であるとするか、の2つである。この2つの異なる定式化が 本当に違いをもたらすかどうかを問うのがチレルソン問題である。 近年になってチレルソン問題は、純粋数学(作用素環論、非可換実代数 幾何学)における諸未解決問題と同値であることが分かってきた。
この講義ではEPRパラドックスやベル不等式、チレルソン問題に ついて解説する。 線形代数学の基礎(線形空間の計量やエルミート行列の対角化)を 予備知識として利用する。

参考文献:


"http://www.kurims.kyoto-u.ac.jp/ja/special-02.html"

 

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Research Institute for Mathematical Sciences (RIMS)