令和8年度 第47回数学入門公開講座
(オンライン同時開催)
令和8年8月3日-8月6日(第47回) 演題及び講師
助教・渡辺 聡美
確率論では、「対象の振る舞いがランダムである」という仮定を通して、複雑な現象を観察していきます。本講座では、最も基本的な確率モデルの一つであるランダムウォークを題材に、現象をどのように数学として定式化し、その性質を分析することができるのかを考えます。特に、ランダムウォークが出発点に戻る再帰性や、複数のランダムウォークの衝突といった事象を取り上げ、空間の次元や構造がランダムウォークの振る舞いにどのような影響を与えるのかを解説します。これらの話題を通して、単純な設定から多くの数学的な問いが生まれ、そこから豊かな理論が広がっていく様子を紹介します。
教授・玉川 安騎男
ガロアの逆問題とは、任意の有限群が有理数体上のガロア群として実現されるかという問題です。この問題は、19世紀末には既に研究が始まっていた数論の古典的難問題で、現在でも未解決です。この講義では、まず、ガロアの逆問題の定式化に必要な、群・体・ガロア理論についての基礎事項を解説します。次に、ヒルベルトの既約性定理について紹介し、ガロアの逆問題がどのように幾何の問題と結び付くかについて説明します。最後に、ガロアの逆問題へのいくつかの数論幾何的アプローチについて、その考え方の一端を紹介します。もし時間があれば、ガロア理論の別のタイプの逆問題と考えられる、遠アーベル幾何についても少し ふれたいと思います。
システムの振る舞いと双模倣性
助教・郡 茉友子
「プログラムなどのシステムが正しく動くか」を数学的に証明したり、反例を探したりして確かめる分野を形式検証といいます。そこでは、システムがどのように振る舞うのかを数学的に表し、その振る舞いが期待した性質を満たすかを調べます。本講座では、システムを表す基本的なモデルの一つである状態遷移システムを出発点として、計算機科学で無限的な振る舞いを有限的にどう扱っているかを不動点の観点で見ていきます。そこから、帰納法・余帰納法の一般化を通して、システムの性質をどのように証明できるのかを解説する予定です。特に、余帰納法の例として、「双模倣性」について紹介し、 2 つのシステムが等しいことを振る舞いと論理の視点から見ていきたいと思います。
◇特別講演◇
起業と不確実性を科学する
モイ株式会社 代表取締役 赤松 洋介
起業や Web サービスの立ち上げの面白さは、不確実性の高い状況の中で意思決定を重ねていくことにあります。本講演では、16年間続くライブ・コミュニケーションサービス「ツイキャス」を題材に、強い競合がいる中で、ユーザーが使いたくなる、続けたくなる、広めたくなる感情や行動のきっかけをどのように設計してきたかを、成功と失敗の両面から紹介します。また、ユーザーやコミュニティの変化を観察し、限られた情報から仮説を立てて判断してきたプロセスを振り返ります。数理工学で学んだ考え方が、Web サービスの開発や経営の現場でどのように生かされているかを知る機会になればと思います。
(講義ノート)
