談話会/Colloquium
Title
新谷関数による保型L関数の構成について
Date
2006年12月20日(水) 16:30~17:30 (16:00より1階ロビーでTea)
Place
京都大学数理解析研究所 202 号室
Speaker
菅野 孝史 氏(金沢大・自然)
Abstract
古典群上の保型形式の研究において,付随するL関数を調べることは 基本的な問題の一つです. そのためには,Hecke 作用素の固有値を用いた Euler 積として定義される 保型L関数を,もとの保型形式から構成する必要があります.これには様々 な方法が知られていますが,村瀬篤氏(京産大・理)との共同研究では, 新谷関数(一種の球関数)を用いた構成を提唱し,直交群,ユニタリ群に ついて実践してきました.今回は,四元数歪エルミート形式のユニタリ群 の場合を中心にお話したいと思います.
Title
擬等角写像類群の固定点問題
Date
2006年12月20日(水) 15:00~16:00 (16:00より1階ロビーでTea)
Place
京都大学数理解析研究所 202 号室
Speaker
松崎 克彦 氏(岡山大・自然)
Abstract
閉曲面の写像類に関するニールセン実現問題やサーストン・ベアスの分類をリ ー マン面一般の擬等角写像類に対して拡張することを考える.とくに漸近的等 角同値類の固定化群(任意の可算群は,あるリーマン面に対してこのような実現 をもつ)について,タイヒミュラー空間への等長的な作用の軌道の離散性,有界 性と固定点の存在を問題にする. 楕円型写像類(モジュラー変換)は,等角自己同型としての実現をもつ写像類で あるが,言い換えればそれはタイヒミュラー空間に固定点をもつものである.ニ ールセン実現問題は写像類群の任意の有限部分群に対して,その固定点の存在 を主張するものであった.リーマン面一般の擬等角写像類群に対しては,無限群 の場合も許し, タイヒミュラー空間に有界な軌道もつ部分群は固定点をもつこ ととして定式化される.この主張の正当性は,Markovic の最近の結果より導く ことができる. 漸近的楕円型写像類は,エンドの近傍で漸近的に等角写像として実現される写 像類であるが,それは漸近的タイヒミュラー空間と呼ばれるタイヒミュラー空 間のある商空間に固定点をもつものである.したがって,漸近的等角同値類から なるタイヒミュラー空間内のファイバーに作用する群 G は,漸近的楕円型写像 類からなる群である.その軌道の離散性,有界性と固定点の存在に関して,G の 代数的,組み合わせ的な構造を反映した次のような状況が観察できる.軌道が離 散的であるための条件として,G が可解群であるならば離散的であるが,階数 2の自由群を含むときは離散的であるとは限らない.また,固定点をもつための 条件として,G が有限群であるならば固定点をもつが,非自明な等質的擬準同型 を許容するときは固定点をもつとは限らない. これらの現象には共通の原理が存在し,それは群 G 上の L∞ 関数からなる空 間を離散的なモデルとして説明することができる.講演では主にこのモデルを 用いて, 問題の意味を考えていきたい.
Title
有限簡約群のLusztig予想と有限対称空間
Date
2006年12月13日(水) 16:30~17:30 (16:00より1階ロビーでTea)
Place
京都大学数理解析研究所 202 号室
Speaker
庄司 俊明 氏(名大・多元数理)
Abstract
有限簡約群 G(F_q) の既約指標の値を計算するために、
Lusztig は指標層の理論を構成し、指標層の特性関数として
得られる G(F_q) の類関数達が統一的なアルゴリズムによって
計算できることを示した。この特性関数の既約指標への分解を
具体的に与えるのが Lusztig予想であり、それにより既約指標が
統一的に計算できる。
簡約群の中心が連結な場合、Lusztig予想はスカラー倍を除いて解決
された。 スカラーの決定については、Lusztig, 講演者、Waldspurger等
により古典群の場合に調べられているが、 そこでの議論では
類関数の値を mod 2 あるいは mod 4 で評価するために、標数 p が
奇数であることが本質的な条件になり、また複雑な計算も必要になる。
この講演では有限体上の対称空間、すなわち G(F_{q^2})/G(F_q)
の理論を利用して、 標数 2 の (split type の) 古典群に対してスカラーが
決定できることを示す。また 奇数標数の古典群や、例外群の場合にも
ある種の特性関数についてはスカラーが簡単に得られることを示す。
Title
非同型な全射自己準同型正則写像を有するコンパクト複素多 様体の分類について
Date
2006年12月6日(水) 16:30~17:30 (16:00より1階ロビーでTea)
Place
京都大学数理解析研究所 202 号室
Speaker
中山 昇 氏(京大・数理研)
Abstract
コンパクト複素多様体 X が, X から X への全射 正則写像で自己同型射でないものをもつとき, X の構造を双有理幾何学の観点から研究するというテーマについて, 最近の進展を報告したい. 1次元の場合, このような X は種数が1以下のものに 他ならない. 2次元の場合の分類は藤本圭男氏との共同研究により完成している. 通常の曲面の分類と比べるとかなり特殊なもの限られることがわかる. 例えば, X が有理曲面ならば, X はトーリック曲面である. 3次元の場合, 小平次元が非負な射影的代数多様体については, 極小モデル理論を応用して藤本氏がほぼ分類していたが, 最近二 人の共同研究で 残された場合が解決した. 他の3次元以上のものについてはまだ部分的な結果しか知られていない. これらの内容を簡単に紹介する予定である.
Title
KdV方程式の有限次元モデルと近似定理
Date
2006年11月29日(水) 16:30~17:30 (16:00より1階ロビーでTea)
Place
京都大学数理解析研究所 202 号室
Speaker
高岡 秀夫 氏(神戸大・理)
Abstract
周期KdV方程式の無限次元Hamilton系について、有限次元Hamilton系で近似で きるかどうかを考える。フーリエ成分を考えて、内部波間の非線形相互作用が高調波 において減衰するような場合は、非線形項の影響が小さくなるため、フーリエ射影空 間で近似を行うことができるであろうと期待される。実際、非線形Klein-Gordon方程 式に対してはKuksinによる結果があり、非線形Schrodinger方程式に対してはBourgai nの結果が知られている。他方、非線形項に移流項を伴うKdV方程式に対しては前述の 2例と近似モデルが異なる。本講演では、近似モデルの定式の違いについて、非線形 相互作用における非線形共鳴・非共鳴の観点から紹介する。近似定理に関する評価式 から、KdV方程式のHamilton流に対するsymplectic nonsqueezing theoremについても 解説したいと考えている。
Title
Dunkl operators and Hecke algebras
Date
2006年11月22日(水) 16:30~17:30 (16:00より1階ロビーでTea)
Place
京都大学数理解析研究所 202 号室
Speaker
Raphael Rouquier 氏(Leeds 大学)
Abstract
We introduce certain algebras of deformed differential operators on a vector space. Their representation theory can be studied via monodromy representations, leading to Hecke algebras. There are algebraic descriptions involving quantum groups or affine Lie algebras. The relevant geometry is that of Hilbert schemes of points on the complex plane. On the combinatorial side, this relates to crystal bases of Fock spaces.
大談話会
Title
Crystal bases and Affine Hecke algebras
Date
2006年11月15日(水) 14:40~15:40
Place
京都大学理学部1号館516数学大講義室
Speaker
柏原 正樹 氏 (京大・数理研)
Abstract
結晶基底は、量子群のparameter $q$が可解模型においては温度のparameterであり、
絶対温度零度 ($q=0$)では現象が単純化するだろうという考察から生まれた。
実際、$q=0$においては、量子群の表現はcanonicalな基底(結晶基底)
をもち、その組み合わせ論的性質から表現の種々の性質が導かれる。
また、これを用いることにより、表現の一般の$q$における
基底(大域基底)も得ることができる。
LLT (Lascoux-Leclerc-Thibon) は、A-型 Hecke環の
既約表現と大域基底の密接な関係を予想し、
有木は、これをA-型 affine Hecke環に拡張することにより証明した (LLTA理論)。
講演者は、榎本氏(数研院生)との共同研究で、$B$-型の場合にLLTA理論にあたる
予想を得た。この講演では、結晶基底の初歩と
A-型, B-型におけるLLTA理論を解説する。
大談話会
Title
保型形式の周期とL函数の特殊値について
Date
2006年11月15日(水) 16:30~17:30
Place
京都大学理学部1号館516数学大講義室
Speaker
池田 保 氏 (京大・理)
Abstract
保型形式の周期とはある代数群 $G$ のアデール群上で定義された保型形式を
$G$ の部分代数群 $H$ のアデール群上で積分して得られるような量である.
このような周期は多くの場合に保型形式のL函数の特殊値と関係があることが
知られて いる。
今回の話では直交群上の保型形式の組の周期をある種のL函数の特殊値と関連
付ける予 想と,
この予想に関するいくらかの実例について述べる.
この予想は直交群上の保型表現に関する Gross-Prasad の予想を精密化したものである.
(大阪市立大学の市野篤史氏との共同研究)
Title
ラベル付き配置空間と近似定理
Date
2006年11月8日(水) 16:30~17:30 (16:00より1階ロビーでTea)
Place
京都大学数理解析研究所 202 号室
Speaker
島川 和久 氏(岡山大・理)
Abstract
特異ホモロジーと安定ホモロジーは一般ホモロジー理論 の代表的な例であり、両者の間に深い関連がある。 しかし、通常の構成法ではその点が今一つ明瞭ではない。 この講演では、ラベル付き配置空間の概念を導入して 特異ホモロジーおよび安定ホモロジーの定義を書き直し、 後者を定義する無限ループ空間が前者に対するそれの 部分空間として極めて自然に構成し得ることを示す。 併せて、Segal および Caruso の「近似定理」を一般化 した結果も紹介する予定である。
Title
Algorithmic approach to the computation of homology of spaces and maps
Date
2006年11月1日(水) 16:30~17:30 (16:00より1階ロビーでTea)
Place
京都大学数理解析研究所 202 号室
Speaker
Pawel Pilarczyk 氏(京大・理)
Abstract
In this talk, an algorithmic approach to the computation of homology of topological spaces is introduced, as well as to the computation of homomorphisms induced in homology by continuous maps. Efficient algorithms based on geometric reductions are pointed out, some specific applications are discussed, and freely available software is introduced; for the latter see http://www.math.gatech.edu/~chomp/
Title
ウェイト系に付随する三角圏について
Date
2006年10月25日(水) 16:30~17:30 (16:00より1階ロビーでTea)
Place
京都大学数理解析研究所 202 号室
Speaker
梶浦 宏成 氏(京大・数理研)
Abstract
原始形式の理論と関連して斎藤恭司氏はある4つの正整数の組 $(a,b,c; h)$
からなる正規ウェイト系を導入した. 正規ウェイト系は
$\varepsilon:=a+b+c-h$ という数で分類され, $\varepsilon=1$ のものは
ADE 型, $\varepsilon=0$ のものは楕円型と呼ばれている.
それ等のウェイト系に対して, 特異点のミルナーファイバーを
経由することで, 対応するルート系を定める方法が知られている.
しかしながら, 一般のウェイト系に対して,
この幾何的方法でルート系を構成していくことは非常に難しい.
「ルート系を算術的, あるいは代数的に定める方法はないか?」
という斎藤氏による問題提起に対し, 高橋篤史氏は,
ウェイト系に対して定義される多項式の graded matrix factorization の圏が
(ミラー対称性により)持つべき性質を予想として述べ, その解決方法を与えた.
ADE 型の場合には、この圏は対応する Dynkin 箙の
有限次元表現の成す導来圏と三角圏として同値であることが分かる.
現在, このような三角圏の同値が $\varepsilon=-1$ のクラスのウェイト系について
も得られたのでその結果を紹介したい. この時, 対応する箙は表現論において
未だ理解の進んでいない wild 型と呼ばれるクラスとなる. この結果は,
そのような wild 型の箙の理解の重要な鍵となる例としても興味深いと思われる.
(斎藤恭司氏, 高橋篤史氏との共同研究)
Title
射影空間の自己射と標準的高さ
Date
2006年10月18日(水) 16:30~17:30 (16:00より1階ロビーでTea)
Place
京都大学数理解析研究所 202 号室
Speaker
川口 周 氏 (京大・理)
Abstract
Title
開多様体のp進Hodge理論
Date
2006年10月11日(水) 16:30~17:30 (16:00より1階ロビーでTea)
Place
京都大学数理解析研究所 202 号室
Speaker
山下 剛 氏(京大・数理研)
Abstract
p進Hodge理論とは、局所体やその付値環上の多様体に体して定まる p進etaleコホモロジー、de Rhamコホモロジー、crystallineコホモロジーを 付加構造も込めて比較する理論である。 今回の話では、辻氏によって証明されたp進Hodge理論の主定理 (Fontaine-Jannsenのsemistable予想)の開多様体に対しての拡張を話す。 開多様体に対するsemistable予想からpotentially semistable予想も従う。 手法としてFontaine-Messing-加藤-辻のsyntomicコホモロジーを使うが、 「hollow log-scheme」という正規交叉因子の共通部分のある種の管状近傍 のようなものを新しい手法として導入する。
Title
半線形熱方程式の対数型爆発臨界指数について
Date
2006年10月4日(水) 16:30~17:30 (16:00より1階ロビーでTea)
Place
京都大学数理解析研究所 202 号室
Speaker
金子 晃 氏 (お茶の水女子大・理)
Abstract
熱方程式に未知函数の冪を加えた半線形方程式については、 冪に臨界値が存在し、それを境に解の爆発の様子が変わることが 藤田宏先生により発見され,その後メイヤー等により錐状領域に ついても臨界値が決定されたが,より開きが狭い放物型領域に ついては,臨界値は1となってしまい,有界領域と区別できない. この講演では,堤誉志雄先生により示唆された対数冪型の非線形項 を導入して,より細かな領域の分類を学生と一緒に試みた経験を報告 したい.
Title
臨界確率における確率モデルの熱伝導について
Date
2006年9月27日(水) 16:30~17:30 (16:00より1階ロビーでTea)
Place
京都大学数理解析研究所 202 号室
Speaker
熊谷 隆 氏 (京大・数理研)
Abstract
臨時談話会
Title
Fake projective planes
Date
2006年7月26日(水) 16:30~17:30 (16:00より1階ロビーでTea)
Place
京都大学数理解析研究所 202 号室
Speaker
Gopal Prasad 氏 (University of Michigan)
Abstract
Abstract: A fake projective plane is a smooth compact complex surface
which is not the complex projective plane but has the same Betti
numbers as the complex projective plane. The first fake projective
plane was constructed by David Mumford in 1979 using p-adic
uniformization. Two more examples were found by M.Ishida and F.Kato
using a similar idea. Just recently JongHae Keum has given an example
which may be different from the three known examples.
In a joint work with Sai-Kee Yeung, I have given seventeen finite
families of examples of fake projective planes and shown that these,
and possibly three more, exhaust them.
In another joint work with Sai-Kee Yeung I have studied quotients
of the complex ball of dimension n by cocompact arithmetic
subgroups of PU(n,1), and shown that except for n = 2 and 4, there
are no quotients whose Betti numbers equal that of complex projective
space of dimension n. If n = 4 there are four nonisomorphic quotients
which have same Betti numbers as P^4.
I will give an exposition of these results for a general
mathematical audience.
Title
タングルのなす圏について
Date
2006年7月12日(水) 16:30~17:30 (16:00より1階ロビーでTea)
Place
京都大学数理解析研究所 202 号室
Speaker
葉廣 和夫 氏 (京大・数理研)
Abstract
結び目の量子不変量の研究において重要な役割を果たす概念として、
タングルのなす圏がある。基本的なアイデアは、結び目をいくつかの単純なピース(タングル)
のコピーの合成として表し、また、そのような合成たちが同じ結び目を表すための条件を、
組み合わせ的・代数的な言葉で記述することである。このような記述(タングルの圏の
モノイダル圏としての表示)により、トポロジーを忘れて、結び目の不変量を純粋に代数的に
扱うことができる。
上記のアイデアの解説に加えて、「ハンドルボディ内の底タングルのなす圏」 B についても考える。
B の対象は非負整数であり、m から n への射は、種数 m のハンドルボディ内の n 成分の底タングル
(n個の区間からなる1次元部分多様体で、ある適当な性質を満たすもの)である。
B の代数的構造と結び目不変量への応用について解説する。
Title
Laguerre 過程の漸近挙動
Date
2006年7月5日(水) 16:30~17:30 (16:00より1階ロビーでTea)
Place
京都大学数理解析研究所 202 号室
Speaker
種村 秀紀 氏 (千葉大・理)
Abstract
Title
有理型関数の値分布論について
Date
2006年6月28日(水) 16:30~17:30 (16:00より1階ロビーでTea)
Place
京都大学数理解析研究所 202 号室
Speaker
山ノ井 克俊 氏 (京大・数理研)
Abstract
Title
Dirac operators in representation theory
Date
2006年6月21日(水) 16:30~17:30 (16:00より1階ロビーでTea)
Place
京都大学数理解析研究所 202 号室
Speaker
Pavle Pandzic 氏 (University of Zagreb)
Abstract
Dirac operators have entered representation theory of semisimple Lie groups in the 1970s through the work of Parthasarathy on the construction of discrete series representations. In 1997 Vogan has proposed an algebraic version of Parthasarathy's Dirac operator. His conjecture about the infinitesimal character of unitary representations for which the Dirac operator has a kernel (or cohomology) was proved in 2002 by J.-S. Huang and myself. In the meantime, in part together with D.Renard, we have obtained some results about relationship of Dirac cohomology and the more standard nilpotent Lie algebra cohomology. Furthermore, we have studied analogues of Dirac operators and cohomology for basic classical Lie superalgebras. We have also been working on an algebraic version of Dirac induction, i.e., a functorial construction of representations with given Dirac cohomology. In this talk I will give an introductory overview of the results mentioned above, mostly based on examples.
大談話会
Title
mKdV方程式の可解性と函数空間
Date
2006年6月14日(水) 14:40~15:40
Place
京都大学数理解析研究所 420 号室
Speaker
堤 誉志雄 氏 (京大・理)
Abstract
非線形発展方程式の初期値問題の適切性(解の存在,一意性,初期値に関する連続依存性)の研究は,非線形偏微分方程式論における基本的研究課題の一つである. 一般に,この適切性が成立するかどうかは,方程式を考える函数空間に大きく依存する.最近,Bourgainによって導入されたFourier制限法を用いることにより,非線形波動方程式に対し,Fourier空間におけるエネルギー移送現象と初期値問題の適切性の関係が少し分かってきた.(但し,流体力学で考察されているエネルギーカスケード過程などとの関係は,まだはっきりしない点が多い.)今回の講演では,修正KdV方程式を例に取り,弱い(即ち,広い)函数空間を取ると,どうして適切性が壊れるのか, また弱い函数空間で適切性を回復させるためにはどのような手法があるのかを, Fourier空間におけるエネルギーの流れという観点から解説したい.
大談話会
Title
マトロイド・マッチング --- 歪対称行列の組合せ最適化
Date
2006年6月14日(水) 16:30~17:30
Place
京都大学数理解析研究所 420 号室
Speaker
岩田 覚 氏 (京大・数理研)
Abstract
マトロイドは,線形独立性の組合せ論的抽象化として,1935年に H. Whitney によって導入された.数理計画法の分野においては, 1960年代以降,効率的に解くことのできる多くの組合せ最適化問題に共通の構造として注目を集めてきた.一方で,効率的に解くことのできる組合せ最適化問題の中には,マトロイドや劣モジュラ関数の理論では説明し尽くせないものもある.最も代表的で,興味深いのは,一般グラフのマッチングであろう. マッチングをマトロイドと結びつけて理解するために, 1970年代にマトロイド・マッチング問題と呼ばれる枠組みが導入された.この問題に対して,L. Lovasz (1980) は,一般のマトロイドでは多項式時間解法が存在し得ないと同時に,線形表現されたマトロイドでは,最大最小定理が成立し,多項式時間解法が存在することを示した.このような興味深い現象が起こる背景に関して,十分に理解されたとは言い難い状況にあり,重み付き線形マトロイド・マッチング問題に対する多項式時間解法の設計など,解決すべき課題は多い. 本講演では,マトロイド・マッチング問題の概説を行う.特に,歪対称行列との関連に着目した近年の研究成果も紹介する.
Title
反応拡散系が呈するパターンと固有値問題
Date
2006年6月7日(水) 16:30~17:30 (16:00より1階ロビーでTea)
Place
京都大学数理解析研究所 202 号室
Speaker
宮本 安人 氏 (京大・数理研)
Abstract
反応拡散方程式(系)は,化学や生物学に現れる現象を記述する基礎的な方程式である.1960年代から現在まで,漸近安定性や有限時間爆発など,さまざまな現象が発見され研究されてきた.本講演では,活性因子・抑制因子系と呼ばれる反応拡散系の物理的に実現可能である安定定常解に関する結果を中心に,定常解の形状に関する結果を概観する.また非線形単独楕円型方程式の解の形状とモース指数との関係における"hot spot" conjectureの非線形版とも言うべき予想や,類似の固有値に関する重要と思われる未解決問題について,ご紹介したい.
Title
Determinants of Laplace operators on Riemann surfaces and Kronecker limit formulas
Date
2006年5月31日(水) 16:30~17:30 (16:00より1階ロビーでTea)
Place
京都大学数理解析研究所 202 号室
Speaker
Leon Takhtajan 氏 (SUNY at Stony Brook)
Abstract
Kronecker limit formulas (proved by L. Kronecker in 1863 for application to algebraic number theory) can be interpreted as holomorphic factorization of determinants of Laplace operators on elliptic curves (with respect to the flat metric). We will discuss a generalization of Kronecker formulas for the Laplace operators on compact Riemann surfaces of genus g >1 with respect to the hyperbolic metric, acting on n-differentials.
Title
多重ゼータ値の導分関係式について
Date
2006年5月24日(水) 15:00~16:00 (16:00より1階ロビーでTea)
Place
京都大学数理解析研究所 202 号室
Speaker
金子 昌信 氏 (九大・数理)
Abstract
多重ゼータ値の線型関係式のある広いクラスを提供する「導分関係式」というものがある.これに関連して現れるリー環が Connes-Moscovici の最近のある研究に現れるものと同じであることに目をつけ,彼らの考えているホップ代数のまねをして上記「導分関係式」の一般化を考える. まだ予想の段階であるが,どうもやはり多重ゼータ値の関係式で,一般には旧来の導分関係式には含まれないものを与えるらしい. 実験結果を中心にお話したい.(勿論当日までに証明が出来ていれば言うことはないのであるが.)
Title
Hopfish algebras
Date
2006年5月24日(水) 16:30~17:30 (16:00より1階ロビーでTea)
Place
京都大学数理解析研究所 202 号室
Speaker
Alan Weinstein 氏 (UC Berkeley)
Abstract
Multiplication on a group G is usually encoded as a coproduct in a suitable algebra A(G) of (continuous, smooth, algebraic, etc.) functions on G, i.e. as a homomorphism from A(G) to A(G) tensor A(G). The resulting structure on A(G) is that of a Hopf algebra. When G is the quotient of a circle by a dense cyclic subgroup, the only continuous functions are constants, but the methods of noncommutative geometry suggest an alternative: the so-called crossed product, or irrational rotation, algebra. This algebra, also called a quantum torus algebra, is not a Hopf algebra, but we can encode the group structure on the "bad quotient space" as a bimodule, giving rise to what we call a hopfish algebra. In this talk, I will explain how bimodules play the role of generalized homomorphisms between algebras, in particular with reference to the notion of Morita equivalence. I will present the general notion of hopfish algebra and show, when applied to the irrational rotation algebra, how it gives rise to an interesting tensor product structure on a nice class of representations. (This is joint work with Christian Blohmann, Xiang Tang, and Chenchang Zhu.)
Title
複素射影空間の上の力学系
Date
2006年5月17日(水) 16:30~17:30 (16:00より1階ロビーでTea)
Place
京都大学数理解析研究所 202 号室
Speaker
上田 哲生 氏(京大・理)
Abstract
複素射影空間からそれ自身への正則写像はリーマン球面の上の有理関数の高次元化と見なすことができる.その反復合成から1次元の場合と同様にファトゥ集合を定義できる一方,その補集合は位数の異なるジュリア集合によってフィルターづけされる.また,無限個の周期点ファトゥ成分が存在しうるなどの新しい現象も生ずる. このような1次元の場合と高次元の場合の共通点と相違点を比較しながら,具体的な例の構成を中心にお話しする.
Title
結び目とその交差数
Date
2006年5月10日(水) 16:30~17:30 (16:00より1階ロビーでTea)
Place
京都大学数理解析研究所 202 号室
Speaker
Alexander Stoimenow 氏 (京大・数理研)
Abstract
19世紀には結び目は原子を表現し宇宙の構造を説明するものと信じられてその詳しい研究が始まった。 その間違った動機で結び目表(knot table)の作成が始まった。 結び目表に関係の有る現代の研究問題について話をするつもりです。 特に図式から交点数の決定と評価、自明な結び目の判定等を中心とします。時間が残る場合、用いた手段と不変量を紹介したいです。
Title
地球・惑星・恒星内部の流れと回転する球殻内の対流問題
Date
2006年4月26日(水) 16:30~17:30 (16:00より1階ロビーでTea)
Place
京都大学数理解析研究所 202 号室
Speaker
竹広 真一 氏(京大・数理研)
Abstract
地球流体力学は, もともとは地球の大気や海洋の流れに内在する基本的な流体の性質を説明するという理学的興味と, 天気予報に必要となる基本法則を与えるという工学的な知識を提供するために発展してきた分野である. しかしながら近年では, 地球内部のマントルや流体核, あるいは木星型惑星や太陽内部の流れに関連する観測事実がふえてくるとともに, 地球流体力学が対象とする現象が拡がってきている. 本講演ではそのような最近の観測結果を紹介し, 地球・惑星・恒星内部の流体現象を考察するための基本的なモデルである「回転する球殻内の対流」の問題について平易に解説する. いくつかの対流の数値計算例を紹介し, 物理法則から導かれる流れの性質を解釈しながら, 近年の観測結果との関連を議論する.
Title
放物接続のモジュライとパンルベ第6方程式
Date
2006年4月19日(水) 16:30~17:30 (16:00より1階ロビーでTea)
Place
京都大学数理解析研究所 202 号室
Speaker
稲場 道明 氏 (京大・理)
Abstract
射影直線上で4点の確定特異点を持つ2階の線形常微分方程式のモノドロミー保存変形はパンルベ第6方程式と等価である。 よってこのような線形常微分方程式のモジュライ空間がパンルベ方程式の初期値空間と見なされるべきである。 実際には線形常微分方程式のモジュライを放物接続のモジュライとして捉えることにより、このモジュライ空間が岡本和夫氏によって構成されたパンルベ第6方程式の初期値空間と同型であることが示される。 さらにこのモジュライ空間のコンパクト化の構成もできて、初期値空間のコンパクト化と同型であることが示される。 また、基本群の表現のモジュライ空間との関係から、モノドロミー保存変形の幾何学的パンルベ性という性質が導かれることにも触れる。
Title
局所的に同じ対称性をもつ空間がとりうる大域的な形
Date
2006年4月12日(水) 16:30~17:30 (16:00より1階ロビーでTea)
Place
京都大学数理解析研究所 202 号室
Speaker
小林 俊行 氏 (京大・数理研)
Abstract
「局所から大域へ」は20世紀の幾何における大きな流れであり、とりわけリーマン幾何において大きな成果が得られてきた。その一方で相対性理論でおなじみのローレンツ幾何やもっと一般の不定値計量をもつ擬リーマン幾何や他の幾何構造(シンプレクティック, 複素, ...) などに関しては、局所的な均質性を課した場合でさえ大域的な性質は驚くほど何もわかっていない。 局所的な均質性に関していえば、リーマン対称空間をモデルとする場合は、古典的な多くの結果が知られている:例えば、リーマン対称空間と局所同型なコンパクト形は常に存在する(Borel)。(一例として、Poincare上半平面に対しては、種数2以上の閉リーマン面がコンパクト形である)。また、高次元の場合には、大まかにいえば、基本群が幾何構造を決定する(剛性定理)。 その反面、自然なリーマン計量が入らない一般の対称空間では、不連続群が殆どない場合(Calabi-Markus現象)や高次元でも「剛性定理」が成り立たない場合(例えばGoldmanによる3次元の非標準ローレンツ閉空間形)など、個別の不思議な現象が発見されているが、研究分野としては非常に若い段階にある。 この講演では、非リーマン等質空間の不連続群に関して、リー群の構造論、エルゴード理論、ユニタリ表現論、離散群のコホモロジーなどの手法を取り込んだ1990年代以降の研究と問題意識について、群論的な背景からできるだけ具体的な例をあげてお話をしたい。
Title
複素シンプレクティック多様体の変形、特異点解消
Date
2006年1月11日(水) 16:30~17:30 (16:00より1階ロビーでTea)
Place
京都大学大学院理学研究科 数学教室大会議室
Speaker
並河 良典 氏 (阪大・理)
Abstract
特異点をもった複素シンプレクティック多様体の変形について講演する。その応用として、つぎの2つを示す。 (i) 極小モデル予想を仮定すれば、(標準特異点をもった)射影的複素シンプレクティック多様体 X が、変形のよってスムージング可能であることと、X がクリパントな特異点解消をもつことは同値である。 (ii) 複素シンプレクティック多様体の間のフロップで、両者の特異点には変化が生じない。
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